【ルックバック劇伴】haruka nakamuraのオススメ4曲
無職86日目を迎えた。
毎日、大体6時ごろには起きて、長ければ1日10時間はPCに向かって調べものをしたり、ブログを書いたりしている。
今回は、いつも作業しながら聴いているharuka nakamuraの素晴らしい楽曲を紹介したい。
haruka nakamuraは、最近だと映画『ルックバック』の主題歌・劇伴を手掛けたことで有名である。15年以上前は、彼はエレクトロニカやポストクラシカルとよばれるジャンルの界隈で知られる存在だった。
その後作品の発表を続けた彼は、映像・写真・絵画などさまざまな分野のアーティストとコラボしており、近年は特に映画やドラマ、CMなどの音楽の担当が増えている。
業界での実績や活躍はすさまじい。ただ、彼が携わった作品そのものと同等に、添えられた音楽の美しさも評価されるべきだと思った。彼の音楽がもっと広く認知され、評価されてほしいという個人的な思いから、今回筆を取った次第である。
四月の装丁
最近は朝起きると、まずこの曲を聴いて1日を始める。なにかの作品に触れた後など感傷的になっているときにこの曲を聴くとつい涙がこぼれてしまう。シンプルかつ洗練されたメロディが胸に響き、そしてやさしく力強いハーモニーによって、世界が少しずつ彩られる。
1度だけでいい、1度だけでいいから作業や考え事をいったん止めて、11分、目をつぶって聴いてほしい。あなたの『人生』という名の物語に、そっと寄り添ってくれることだろう。『四月の装丁』を含むアルバム『音楽のある風景』は名盤で、『SIN』などの他の楽曲もオススメ。『音楽のある風景』は10/25以降再販予定である(詳細)。公式オンラインショップは9/24時点で売り切れのようだ。
八星
繊細な歌声を持つシンガーソングライター、LUCAとharauka nakamuraのユニット『arca』名義の楽曲。haruka nakamuraのピアノは、誤解をおそれずに言うのならば、決して毎回主役ではない。
歌とのコラボでも、映像の劇伴でも、合奏の中にあっても、彼のピアノはこの世界を切り取った総体としての音楽の一部であり、日常の一部であり、いつも何かに添えられているのだ。たとえピアノの音数が一番多いとしても、描くものは総体としての音楽だ。わたしにはそう聴こえる。
『八星』の曲の一番の魅力は、3:00以降。LUCAの儚い声に重なり、haruka nakamuraのピアノが世界を紡ぐ。一人でも二人でも、音楽は、世界は続いていく。
新しい朝
『新しい朝』を含むアルバム『スティルライフ』は、「ミュートピアノ」、つまり「消音ペダル」で奏でられる小さな音で録音された。
「消音ペダル」は正式にはマフラーペダルと呼ばれ、元来、練習時に音量を下げる目的で使われる。彼はミュートピアノで録音した理由について、アルバム制作時の日記でこう述べている。
なぜミュート・ピアノで録音するのか。
ミュートピアノは実に可愛らしい音が鳴るのだ。
それは生活の音。温度のある音。
光の午後に、部屋で鳴るピアノの音色。
風でカーテンが揺れている。花瓶の水が反射して部屋に光が溢れている。弦とハンマーの間に白いフェルトが降りて、夢の中のピアノの音が鳴るのだ。
彼のピアノソロの演奏すら、自然や日常の中にあるのである。こう言い換えてもいいかもしれない。彼はたまたまピアノという手段を使って、生活の音楽を切り取って描いているのだと。
haruka nakamuraは、「ミュートピアノはピアノの音が小さい分、環境音が目立つためにエンジニアとともにミックスを追求した」と語りつつ、こんなことも述べている。
ミュート・ピアノは僕の音楽にはぴったりの音であり、生活の音がする。スティルライフは「生活の音楽」で在りたい。
最初のピアノソロアルバムはどうしてもミュート・ピアノでスタートしたかった。
自身の音楽として、「生活の音楽」で在りたかった。そして制作も半ばというころ、haruka nakamuraはミュートピアノのより良い音を求めて、ピアノに本来付属している布ではなく、麻の布を使いオリジナルのミュートピアノを作り上げる。簡単にいうと、ピアノの一部に手間を加えて音を改造したということだ。
しかし、彼がオリジナルミュートピアノを作ったのは多くの録音を終えてからだった。それでも、この麻に似合う曲があるかもしれない、と音の探求を続けて、何度もテイクを重ねることになる。
中でも、『新しい朝』は音域などの関係で録音に悪戦苦闘したという。たった2分17秒のシンプルなピアノ曲にすぎない。しかしそこには聞き手が想像もし得なかった物語があり、かくも徹底的に音を追い求めたharuka nakamuraら制作陣の思いがあると知ると、曲は深みを増し、アルバムになった楽曲たちを通して、彼らの人生をみるのである。
arne
『arne』という楽曲そのものは、harukanakamuraの2008年の1stアルバム『grace』の中の代表曲である。それから6年経って、写真家・映画監督の奥山由之の意思により上記の映像ができた。
MVを観ると、楽曲に込められたノスタルジックな世界観が、奥山氏によって胸が痛いほどに具現化されている。haruka nakamuraの作った『arne』という曲から広がって溢れんばかりの郷愁さを受けて、奥山氏はクリエイターとして本能的に撮ったともいえる。
またこの楽曲は「どうぶつの森」のCMのテーマソングとしても起用されている。この楽曲の持つ世界観の広がりの象徴である。コロナ流行期、ステイホームと重なり「どうぶつの森」が大流行したのは周知の事実だが、わたしはこのCM、そして『arne』という楽曲も「どうぶつの森」の流行に大きく寄与したと思っている。
まとめ
やや気持ちが昂ってしまったが、haruka nakamuraの音楽は、「生活の音楽」という性質や劇伴が多いという特性上、メインで語られることが少ないのはふつうなのかもしれない。しかし、よく心を研ぎ澄ましてみると、彼の音楽が、いつも作品の根底たるもの、自然や生活、物語といった本質に添えられているのに気づく。
今回は、音楽への入り込みやすさを重視して4曲を紹介した。他の楽曲も素晴らしいので、ぜひ公式YouTubeチャンネルなどで聴いてみてほしい。この記事を通して、haruka nakamuraの音楽を知り、触れる方が増えれば本望である。
haruka nakamura 公式YouTubeチャンネル
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おしまい
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