2021-09-28

13年前、私は独りでピアノを始めた

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高校2年の夏休みが近づく7月初旬ごろ、私はピアノを買うことを決意した。

理由は、1つ目にYoutubeやニコニコ動画で弾いてみた動画を見て、

かっこいいと思ったから。

2つ目は、部活も勉強もやっていなかったので、夏休みの長い時間を使って取り組むものとして、

ちょうどよいタイミングだったから。

 
7万の電子ピアノ(YDP-160)をネットで注文し、7月下旬に届いた。貯金がなくなった。

炎天下、配達員が一人で届け「運ぶの手伝ってください」とのことで、

私と一緒に家の中に運ぶ。仕方ないことだが、配達員がかなり汗臭い。

『組み立ては危険なので決して一人で行わないでください』と組立説明書に書いてあったが、

無理に持って全身打撲しながら、一人で4時間ぐらい掛けて組み立てた。

 

楽しかった。

初めてのピアノが届いた夏、休みの間中、引きこもってピアノを弾いていた。

ピアノの置き場が私の部屋だと狭くなるからと、空き部屋に置くよう家族に言われたが、

そばに置きたかったので自分の部屋に置いた。

楽譜を読もうとしたが読めず、自分に怒ることもあった。

途中から自分には楽譜を読む力も精神力もないとわかり、読むのをやめた。

始めて数週間で、自分は上手に弾けるようにならないだろうということがわかったが、

同時に自分がピアノをやめることはないだろうとも思った。


大学3年のとき、飼っていた犬が死んだ。

悲しみ方が分からなかった私は、電車で買い物に出掛けた。

途中下車し、昼間からコンビニで500mlのチューハイを2缶買い一気に飲んで、再び電車に乗る。

目的地である本屋に着くと、不思議な感覚で並んでいる漫画や小説を見る。

私の体はどうして動いているのか。目当ての本を1冊買って、また電車で帰る。

車内、電車の揺れる音あるが人の声なく、心がすっと落ち着いた瞬間、涙がこぼれる。

家に帰り、部屋に直行しピアノに触れる。

そのとき、初めて私の感情がピアノを弾くという感じがした。

現実世界に在る私の体がただ物理的に奏でるのではなく、私も分からず言葉にできないような、

姿なく曖昧で脆い私の感情が、ただ感情が弾いて音が聴こえるのだと思った。

ピアノを弾きながら一人で泣くと、犬の死をやっと、12時間以上も経って理解した。

 

 

私は他人から、何を考えているのかわからないとか、感情があるのか、とよく言われる。

自分でも自分が何を考え、何を感じているのかわからない。

ただ気づいたのはピアノを弾いているときに、

しばしば自分の心の奥を窓越しに少し覗けるということ。

美しい音楽を奏でるということが、自分の知らない自分や感情を知ることになっている。


 

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