2025-03-26

何一つ無駄ではなかった

無職269日目である。

前回の記事からちょうど100日が経過した。まだ仕事探しはしていない。

貯金は尽きてしまったため、父から借りた50万円と、80万ほどあった株式を崩して生活している。家賃や保険料、税金を払っているだけで毎月10万もなくなってしまうのだから、まったく恐ろしい。

前回の記事を書いた2024年12月は、茨木のり子の詩との衝撃的な出会いがあった頃だった。あれから彼女の詩は一通り読んだ。その衝動のまま、彼女の研究と称して茨木のり子が眠る地、山形県鶴岡市までの旅程を何度か組んでみたものの、名古屋からは距離もあるし、あまりに寒かったのでやめた。

昨年末、いろいろな本を読み漁っていた頃に、ある著者との出会いがあった。その方の名を、勅使川原真衣という。彼女の著書『働くということ』は、今年2月に新書大賞2025で第5位を獲得している。

まさに無職になって200日近いころに「働くということ」を考えていたとき、たまたま『働くということ』という本が目に入り、読んでみた。すると、わたしが学生時代からひっそりと一人で考え続けていたテーマについて、豊富な知識や経験をもとに明瞭な語り口で書かれていた。メインテーマは能力主義である。彼女は能力主義への批判や、それを越えた人間や組織の在り方についての提言をしていた。

わたしにとってのいちばんの驚きは、「このテーマについての論考があるのか!」と知ったことだった。昨年秋から、「生きづらさ・生きがいに関する考察をしたいが何から始めようか」と思っていたところで、勅使川原氏の言説はその入り口になったのである。わたしの研究もここからはじめようと思った。

というわけで、現在刊行されている彼女の著書はすべて読んだ。知識や経験もないわたしだが、恐れ多くも、現代社会における違和のポイントや考察の視点はかなり近いものがあった。近い視点で以前書いたnoteをXにてポストしたところ、勅使川原氏はわざわざ読んでくださり、また共鳴するものを感じ取ってくれていた。

少しでも彼女に追いつきたい。その一心で、ここ数カ月は能力主義、傷、ケア、倫理、利他といった分野の本を少しずつ読み進めている。もともと興味があってたまに読んでいた分野でもあるが、関連分野を拡張し、最低限自分の文章の中ですらすらと引用できる程度には読み込みたいと考えている。

なんてことをしているあいだに、今年1月末には雇用保険の受給が終了した。金が無い。ただ、もうしばらくこの期間を延長したいと思う。

このブログでも、以前の記事で「1~2月が無職のタイムリミットである。それまで無職を堪能する」などという計画を記してきたが、もうすこしこのモラトリアムを過ごしたい。せめて、この無職期間の体験や読んだ本、考えたことなどを自分の納得のいく一つの文章にまとめたい。

それをやりきったら心置きなく成仏しても……いや、無職を卒業してもいいだろう。

「なにかを一つにまとめる」という点について内省すると、わたしは全く関係のない二つの出来事を無理やりにつなげがちな人間だと思う。読んだ本の内容や経験したことはどれもたいてい忘れてしまうが、こうやってパソコンに向かって書こうとすると、引き出しの中にしまった断片的な情報が合体する。そこには強い磁力のようなものが発生していて、わたしはこの原理によって自分の思考を作っている。

以前スティーブ・ジョブズが「点と点をつなぐ」ことについて話していたが、わたしはいつもこれを能動的にやろうとしている気がする。

この無職期間、金は無いが莫大な時間を手にした。働いている時には気になっても借りれなかった本を読んでみたり、旅に出てみたり、文章をあれこれ書いてみたりした。昔の思い出を捉えなおしたり、以前夢中になっていたものに再度ハマってみたりした。

そうすると、自分の過ごしてきた時間の深さは増し、知覚・想像できる範囲は広がった。今なら、以前より深いところに潜って文章を書けるのではないか。でも、時間が深まって世界が広がっただけに、まとめるのにはかなりの集中力と根気が要ると思われる。

しかし、たった一つでいいから、納得のいくものを書きたい。わたしの見たもの、心を動かしたもの、考えたことを忘れずに残しておきたい。

先日、6日間ほどの放浪の旅に出ていた。その初日、とあるフォーラムにて、勅使川原氏と直接お会いすることができた。あいさつをし、なにかと気にかけてくださっていることの感謝を伝えた。いまわたしは、こっそりと彼女を「先生」あるいは「師」と崇めて活動している。

しかし、こうして彼女と会えたのも、無職で何かを求め模索し、図書館でたまたま彼女の著作『働くということ』を手に取ったからだと考えると、人生なんだか不思議なものである。こうして点から点へとつながり、最後には何一つ無駄ではなかった、と知るはずだ。

ところで先日、父から借りた金で家賃や保険料を支払っている中で、このブログのドメイン維持費、サーバー代で2万近くを支払った。アフィリエイト収益は1年で100円ぐらいなので大赤字である。それでもこの場所は維持したい。自分を見つめなおし、ときに真剣に、ときにふざける居場所を残しておきたい。

そういうわけで、まだまだ続きます。これからもめりこまをよろしくお願いします。ふだんはnoteXに居ます。ゆくあてのない人生の放浪は止まらない。

※著書へのリンクはAmazonアフィリエイトを利用しています。

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