2021-05-05

岡崎律子氏との出逢い

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20年程前、インターネットのチャットや掲示板でいろんな人と交流していた。
そんな中知り合った友人のHPに、とても印象的な音楽がBGMとして流れていた。
私はその曲が好きでそのHPに幾度も通って、聴きながら他のサイトを見ていた。
しばらくしてそのHPの更新が途絶える。
私は彼女にメールをすることにした。

”お元気ですか、私を覚えていますか。あなたのHPのBGMが大好きでずっと聴いています。
よければ曲名を教えてください”

”久しぶり。忙しくてHP全然更新できなくなっちゃった。あの曲はフルーツバスケットというアニメの曲だよ。いい曲だよね。またね”

そんなやり取りをした。メールを受けて調べると、フルーツバスケットというアニメのOPで、For フルーツバスケットという曲名らしい。
数年間MIDIだけで聴き続けていたその曲の原曲をついに聴いた。細く、消え入りそうな声で、なんだこれと思った。こんな歌があるのかと思った。
初めて原曲を聴いたときはそのぐらいの印象だった。

それからさらに数年経ってふとFor フルーツバスケットの原曲を久しぶりに聴いたとき、急に心が撫でられるような心地がした。
私が初めて自我を持った時のように、急に自分の感情の深い部分に気づく体験だった。歌詞が、言葉が、声が、歌い方が、胸に響いた。
初めて原曲を聴いたときにはメロディしかわかっていなかったが、自分が成長して理解できるようになた。言葉や声に込められたものが響いた。
そして、この感覚のために、自分は生きるのだと思った。自分の心を撫でること、自分の気づかぬ心の奥の感情の扉や窓を開くこと、そのために自分はこれから生きていくのだと。
さあ、と思ってその歌手の他の曲をたくさん聴こうと調べると、既に亡くなっていることを知る。彼女の名は、岡崎律子といった。

音楽かなにか、感情を大きく揺さぶるものを、自分で何かをしたいというエネルギーが限界になったとき、私はピアノを始めた。すでにいい歳であった。

10年来の下手の物好き、何度弾いても忘れ、ミスばかりだがピアノの無い生活はもう不可能だ。私にとって大事なのはあの穏やかな感情と鋭い思考。青空を見て素直に美しいと、穏やかな気持ちでいること。確かなものをみつめ、知らぬものわからぬものを知ること。
“彼女”はもういないのかもしれないが、その魂と音楽は存在している。

大人になってピアノを始めるとは小さいころは考えていなかった。
ピアノを独学で初めて何年経っても、人前でピアノを弾くことなんて考えられなかった。
日々の配信で細々と弾くのが精いっぱいだった。
しかしあなたの曲なら弾こうと、弾きたいと思えた。

私はこれからも心の内であなたと出会い、
何が起きようと穏やかに、すこやかに日常を生きていこうと思う。


※この記事は2019/09/29にnoteに投稿した記事を基に作成しています

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